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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
大袈裟に云えば、僕は彼女の眼差しのうちに未知の自分を確認するような気さえしている。こうして僕に思いがけなく新しい交友の領域がひらけた。
彼女と僕が話しているのをよそ目に見たら、大分了解の届いた仲に見えるかも知れない。僕としてもつきあいの短いわりにはお互いに気心が分ったような気がしている。彼女は僕のことをこだわりなく「おじさん」と呼んでいる。彼女から見れば僕などはおじさんに違いない、またおじさん以外の何物でもあるわけがない。彼女からおじさんの御商売は? と訊かれて、僕は小説を書いていると答えた。靴屋ならば靴をこしらえていると答えるだろうし、時計職ならば時計を組立てていると答えるだろう。ただ僕の場合はまだ文芸年鑑にも登録されていないし、一冊の著書さえなく、また二三書いたものを発表したこともあるが、その雑誌もいまは廃刊している。けれども若しそんなことで僕が悪びれたりしたなら、その小さな店で敢闘している彼女に対しても、男子の沽券にかかわることだろう。自分で小説書きを標榜する以上、上手下手はべつとして、僕としては仕事に励む気になっている。それに応じて仕事そのものが精を出してくれたなら、申し分ないのだが。