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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
イエは師匠の名をそっくり貰ったわけである。父は弟子も少くて、それに多く女弟子であったが、誰もが単に越の一字を譲られるのみであった。イエの場合はいわば破格の栄誉であった。弟子達の中には不平の声を漏らす者もあったという。それかあらぬか、その後弟子達の間でイエは妙に孤立するような立場に置かれた。何んと云ってもイエが小娘のことであったから。イエの名には祖母も大分躊躇したらしい。しかし父だけは至って無造作に、「越喜代って悪くないよ、なかなかいい名じゃないか。」そう独り頷いていたという。父にしてまたイエの素性を見込んだものとすれば、大阪お祖母さんはひそかにほほえむものがあったわけだが、そこのところはなんともわからない。
イエがまた自分の家へ帰ってしまった当座、私はやはり物足りない気がした。短い間であったが起居を共にしては、家内のそこ、ここにイエの俤が残っていて、ふとさみしさに襲われたりした。イエはいままで通り稽古には来ていたが、その時間を私は学校へ行っていて、イエを見かけることも少くなってしまったのだ。
あれは確かその年の十二月のことだったと思う。雪の夜だった。