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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
少年期の憂鬱に既に私はとり憑かれていた。私は快活な心を失った。学業にはてんで興味が湧かず熱意を持てなかった。学校は苦になることばかり多かった。親しい友達も持てなかったから。心を傾ける物にも人にも遇わず、もの足らわぬ心で優柔不断な朝夕を送っていた。そういう私には伊沢先生の厳格な塾風が気に入らなかった。なんによらず克己ということが、私にはひどく苦が手であった。先生の寛容に狎れては無智な傲慢で迷惑をかけることも度重なっていた。奔放不羈、と先生は私のことを云われたが、それは先生が少年の血気を咎められなかったからである。私ほど独立の心に欠けた者もあるまい。私は単に放縦であったに過ぎない。長ずるにしたがって私の精神の薄弱は事毎に暴露された。先生は今は亡き人である。ふと辛い気持に襲われる。先生の光風霽月の心境が今は私にも仰がれる気持だ。
四年に進級する期に私は落第した。ひそかに怖れていたものが遂にきたのである。自分だけのことを云えば、その時の私には落第などは屁の河童だった。ただ母のことが省みられた。そのことから受ける母の打撃を思うと流石に私も臆さないわけにはいかなかったのだ。