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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
私はいままでが拙なかったように、これからさきも恐らくしくじってしまうかも知れぬ。そのとき人は私の誠実の足らわぬを笑うがいい。自分の手で消してしまわぬ限り消えぬものが私のうちにはあるのだ。――その後イエは浄瑠璃をさっぱり止めた。泉さんと結婚した。(結婚後間もなくイエの母が死んだ。)泉さんは彫金の職人である。間に女の児が生れた。しづという名である。しづちゃんが五つになった年泉さんが亡くなった。泉さんも肉親の縁には薄かった人のようである。私を弟のように愛してくれた。私も泉さんが好きだった。なんだか自分に似ているように私には思われた。もとより泉さんは私などとは違って、確かりした闊達な気性の人で、イエを知る人はこの夫婦のことを鬼に金棒と云ったけれど。人を好きになるのはその人のうちに自分でない自分を見つけるからではなかろうか。なんだか私にはそんな気がしてならない。私が泣虫の証拠であろう。泉さんの死後その多いとは云えぬ知人名簿のはしに、私の転々とした住所がそのつど故人の筆で認められてあるのを見出した時、生前私に打ち解けてくれた数々の言動が新しく思い起され、ああ、この人にはもっともっとわがままをすればよかったと私は思った。