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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

風の便りに聞いたところでは、いまは男とも別れて小料理屋に働いているということであった。

「あの人のことだから結構ほがらかにやっているんじゃない。」

と保険屋の細君は云った。

「そうだろうね。わたしもあの子は堅気はむりだと思っていましたよ。」

「おきぬさんは当てたわね。おかみさんの前だけれど。おきぬさんはいい子だ。」

「ええ。よくやってくれますよ。」

「おきぬさんなら間違いはない。」

そう云う細君の言葉には二重の意味が含まれている。おかみさんは頷きながらも、ふとおきぬが不憫に思われた。

おきぬは井戸端で洗濯をしていた。そこへ嘉吉が労働服の姿でやって来た。見ると、顔色も悪く元気がなかった。

「山田さん。どうかしたの?」

「うん。躯の工合がおかしいんで、途中で帰ってきたんだ。」

「それはいけませんね。」

「少し熱があるんだ。」

「かぜを引いたんじゃない。」

「どうもそうらしい。」

「すぐ寝た方がいいわ。」

足を洗う嘉吉に、おきぬは水を汲んでやった。

その日から嘉吉は寝込んでしまった。流行の感冒にやられたのだった。なかなか熱が下らず、また咳が出て止まらなかった。おかみさんも流石に放っては置けず、おきぬにその面倒を見させた。