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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

その後に、嘉吉が火の不始末をして危く火事を起こしそうになったときに、おかみさんは彼に立退きを迫った。嘉吉としても一旦は承知しないわけには行かなかった。けれどもその後も、嘉吉はなかなか動こうともしなかった。あるとき、おかみさんが催促したら、

「いま家を建てているんです。出来上ったら引越します。」

と恐い顔をして云った。

「見かけはおとなしそうだけれど、素性の知れないようなところがある。」

とおかみさんは思った。下手に立退きを迫ったなら、こんどは故意に火をつけられるかも知れないという気がしたのである。

中年の夫婦者のことも、おかみさんは内々は出てもらいたい腹であったが、この方には義理のようなものが出来ていた。それは前の女中に無断で逃げられた当座、おきぬが来るまでの間を、その保険屋の細君に手伝ってもらっていたからである。また下宿人がそれぞれ学校や勤めに出かけた留守の間に、自分たちのほかにその細君がいてくれることは、なにかと好都合な場合が多かった。それにまた女同士の親しみもあった。保険屋の細君はひまを見ては、よくおかみさんの部屋にきて話し込んで行った。

おきぬの前にいた女中は悪い子ではなかったが、浮気な性分で、出入りのクリーニング屋の徒弟に唆かされていなくなった。