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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

その日その日で私はずっとつらい思いをしていたのだが。それでも私には前のことはいやで、いまの方がまだよかったのだ。麻綯いよりも機織りの方が労力を費うというわけで、こっちの方が飯の量が多かった。こっちへきて、前のところの小さい飯のことを思うと、前の暮しがしんからいやなものに思えた。(酉の市などでダルマやお釜の形をしたおこしを売っていたが、ここの飯はつまりあんな風で、筒形に突かれてあった。そして作業の種別でその大小があった。ここにいる者は「今日の飯は突きがいい。」とか「いや、俺のは突きが悪かった。」などとよく云った)こっちへきて前よりも大きい飯にありついたということは私にとって喜びであったのだ。依然としてあの飯を食っている、なんにも知らない前の仲間のことをふと思うと、私はへんに不快な気持になったものだ。いまの方がまだいいと思う私の気持には、飯のことによるものからくるものもあったわけだ。しかしそれがすべてではない。日が過ぎていって、私の心はそういう風になっていったのだ、万事は。つまり私は慣れていったのだ。現在をつらく思う時も、旧にかえることは……元のところへ、みんなが小さい飯を食べているとこへ、あの人の顔の下へまたまいもどることだけはかなわない気持だったのだ。