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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
芳三に先立たれて一年になるが、おすぎは昨今、町などで夫婦連れらしい男女の姿を見かけると、それに気を惹かれている自分に気づくようになっていた。芳三の死が思いがけないものであっただけに、あきらめきれないものが残っていて、気持のまぎらしようのないことがある。おすぎが寡婦の身の上を強く意識するのは、そういうときであった。
看護婦の見習が二人連れ立って入ってきて、順吉の寝台のわきに立った。見ると一人は手に剃刀とちり紙を持っている。彼女は順吉に命じて軽業のような恰好をさせて、もの慣れた顔つきで器用に剃刀をあつかって毛を剃りおとした。用事をすますと、彼女たちはまた連れ立って部屋を出て行った。澄ましたものであった。おすぎは目をそらしていたが、なんとつかず感心した。十四五ぐらいの幼さで、まだ一人前に成熟していない、蚊細い肢体をしている見習に、ひどく職業的なものを感じたのである。
「ひどい恰好をさせやがる。」
順吉は照れて苦笑いをした。
おすぎはまたトシを背負って、町へ出かけて、差当って必要なもの、洗面器、溲瓶、箒、塵とりなどを買ってきた。おすぎが渡した釣銭を財布に仕舞う際に、順吉はふと思い出したように、財布から小さい紙包を取り出してひろげた。