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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
母親は震災のときに死んだ。家は吉原遊廓のはずれの俗に水道尻という処にあって、母親はある貸座敷の新造をしていたのだが、つとめ先のその家が崩壊した際に逃げおくれたのである。母親の死と共に順吉には家庭が失われた。それから他人の飯を食うようになった。二十余年の歳月が過ぎた。いろんな人の世話になり、いろんな職業に就いてみたが、みんなものにならなかった。双六で云えば、いつも振り出しのへんでまごついている感じである。いい齢をしてわが身一つを養いかねているあんばいであるが、結局は自分に辛抱気が足りなかったのだと思っている。これまで決していい目は見て来なかったが、順吉は頑な男ではなかった。頼りない身の上であったから、それだけにまた人の親切は身にしみた。戦後順吉はある五十女の担ぎ屋の手伝いをしていたが、その慾の皮の突張った女から飼い殺しにされているような感じで、毎日寿命の縮む思いをした。順吉はときどき道を歩きながらズボンの上から股のあたりをさすってみたりした。なんだか少しずつ肉が削げていくような気がしたのである。ある日、順吉はふとその気になって職業紹介所へ行って、炭坑夫の募集に応じた。