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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
一生のうちに北海道へ来るようなことがあろうとは夢にも思っていなかったが、そういうはめになったのである。
夕張にきてしばらくは殺風景な、ただ寒いばかりの処だと思った。いまは、住めば都だと思っている。
「順さんはいずれまた東京へ帰るんでしょ。」
と、おすぎが云った。トシに昼寝をさせて、洗濯した順吉のシャツのつくろいをしながら。順吉は寝台に腹這いになって、見舞いにきた寮生が置いていった雑誌をひろげていたが、
「ええ。こっちへ来るときはそのつもりだったんだけど。二年ばかり働いてすこしは残して帰ろうなんて思っていたんだけど。」
「それですこしは残りましたか?」
「いいえ、さっぱり。この分じゃいつ帰れるかわからない。」
「それでも東京には誰方か待っている人がいるんじゃないんですか。順さんがしっかり稼いで帰ってくるのを。」
「冗談じゃない。おすぎさんも口がうまいな。そんな人がいれば、なにも北海道までくるもんか。」
「隠しても駄目ですよ。それじゃ順さんはこれまでずっとお独りだったの? お家を持ったことはないんですか?」
「ええ。いい齢をして他人の台所をうろついてきたんですよ。」