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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
わたしが会います。」
四郎兵衛は直ぐに起きあがって、女中と共に梯子を降りて行った。お杉と義助は又もや顔を見合せた。どう考えても不安である。
そこへ又、女中が引っ返して来た。
「あの、旦那さまが仰しゃいましたが、どなたも決して下へお出でにならないように……。」
「承知しました。」と言って、女中を去らせたあとで、お杉は義助に又ささやいた。「して見ると、やっぱり覚えがあるのだね。出先で多分の用意もないが、金で済むことなら何とでも話を付けるか……。」
「旦那も大かたそのつもりでしょう。」
「そうだろうねえ。」
四郎兵衛は容易に戻って来なかった。それが円満に解決した為か、それとも談判がむずかしい為かと、二人は息をつめてその成行きを案じていると、やがて、遠い下座敷で立ち騒ぐような物音がきこえた。人の叫ぶような声も洩れた。
「おまえ、行って御覧よ。」と、お杉はあわてて言った。
もう堪らなくなって、義助は梯子を駈けおりて行くと、一人の女が宿屋の若い者らに押しすくめられて、表へ突き出されているのであった。距離が遠いので確かには判らなかったが、その女のうしろ姿は藤沢のお安らしかった。