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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

それから李香はやはり包孝粛を売物にして、各地を巡業してあるくと、広東の一件がそれからそれへと伝わって――もちろん、本人も大いに宣伝したに相違ないが、到るところ大評判で興行成績も頗るいい。今までは余り名の売れていない一個の旅役者に過ぎなかった彼が、その名声も俄かにあがって、李香が包孝粛を出しさえすれば大入りはきっと受合いということになったのだから偉いものさ。こうして三、四年を送るあいだに、彼は少からぬ財産をこしらえてしまった。なにしろ金はある。人気はある。かれは飛ぶ鳥も落しそうな勢いでこの杭州へ乗込んで来ると、ここの芝居もすばらしい景気だ。しかし、人間はあまりトントン拍子にいくと、とかくに魔がさすもので、李香はこの杭州にいるあいだに不思議な死に方をしてしまった。」

「李香は死んだのか。」

「それがどうも不思議なのだ。李香はこの西湖のほとりの、我れわれがさっき参詣して来た蘇小小の墓の前に倒れて死んでいたのだ。からだには何の傷のあともない。ただ眠るが如く死んでいるのだ。さあ、大騒ぎになったのだが、彼がなぜこんなところへ来て死んでしまったのか、一向に判らない。