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おいついたゆめ

追いついた夢

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页

青空文庫

「おれがいい嫁を貰うって」宇之吉はかすれ声で叫ぶように云った、

「――じゃおけいちゃんは、おれに待っていろとは云わねえのか」

「だって宇之さん、あたしきれいな躰じゃなくなるのよ」

「そんなことがなんだ、それが悪いんなら罪の半分はおれにある、おれに甲斐性があればおめえにそんな悲しい思いをさせずに済んだんだ、おれあおめえのほかに嫁なんぞ貰おうとは思わねえ」

「宇之さん」

おけいは握っていた彼の手を自分の胸へ押しつけ、喘ぐように叫んで身をすり寄せた。宇之吉はその手を振放し、おけいの肩をつぶれるほど抱き緊めて云った。

「待ってるぜ、おけいちゃん」

おけいは身もだえをした。

「それじゃあ済まない、あたしが宇之さんに済まないわ」

「泣いちゃあいけねえ、いま泣くんじゃあねえおけいちゃん」宇之吉は歯をくいしばった声で云った、「泣くのはもっとさきのことだ、いつかそういう日がきて、二人が晴れて一緒になれたらだ、……それまでは泣くのはよそう、おれも強くなる、精いっぱい稼ぐ、そして何年でも待っているぜ、いいなおけいちゃん」

「そんな、そんなことを云えば」

おけいはいやいやをしながら咽びあげた。