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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
土蔵をあけてはいると、なにが入っているのか長持や櫃や箱がぎっしり並んでいた。和助はおけいを用箪笥の前へ呼んで、
「この中に金や書付が入れてある、これがこの鍵だ、預けて置くから気をつけて持っていて呉れ、それから……」
彼は鍵を三つ渡して、いちばん奥の長持を指さした。
「この中のは纒まった金だからな、用箪笥のはおまえに任せるが、これには手をつけないように、……いまに見せてやるが、あの長持や箱の中にはかねめの品がたくさん入ってるんだ、私が十年かかって集めたものだがね、おまえがよく面倒をみて呉れれば、いつかはこれがみんなおまえの物になるんだよ」
和助の声には一種の感慨がこもっていた。色の黒い逞しい彼の顔は赤くなり、眼はおちつきなく光っていた。
――そうだ、これはおれの物だ、此処にあるすべてはおれの物だ。
彼はこう叫びだしたいくらいだった。
運ばれて来た食事は、山女魚の田楽に鯉のあらい、甘煮と鯉こく、卵焼などであった。おけいは箸をつけたが、川魚の匂いがどうしてもいやで、甘煮と卵焼しか喰べられなかった。
「此処へ来て川魚が喰べられないのは困ったな、まあそのうちに馴れるようにするんだな、鮎も食えないなんてそれこそ玉川が泣くぞ」