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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
いつまでも汚れることのない、単純で美しい性質のためのようであった。
――千人にひとりもないというのは本当かもしれない、慥かにほかの女たちとは違う、ほかの女たちに無いなにかがある。
和助はこう思いながら、早くもそれを馴らしめざめさせてゆく空想に憑かれ、われ知らず深い溜息をついたが、やがてみれんらしくそっとそこを離れた。……彼はおかみの部屋へ寄って、二人だけで話すことがあるから、酒を持って来させて呉れと云い、そのまま二階の元の小座敷で待っていた。
おけいはほどなくあがって来た。
「こっちへ来てお坐り」
和助は彼女が膳拵えをすると、こう云って自分の側へ招いた。わるく遠慮するふうもなく、ほのかな含羞をみせながら、おけいはすなおに来て坐った。
「私はぜひ世話をしたいと思うが、おまえの気持はどうだ、私の面倒をみて呉れるか」
「はい。こんな者ですけれど、お気に召しましたらお願い申します」
おけいは案外しっかりした声でそう答えた。
「支度料や手当のことはこのあいだ云ったとおり、ほかにも必要があれば金のことなら出来るだけのことはするが、ただ、来て呉れるとすれば断わっておくことがあるのだ」