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てつのしょじょ

鉄の処女

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 42 页

青空文庫

たんです。

なアに日本にばかり陽は照らないさ。という伯父の言葉は大変に嬉しかったんです。

私は自分の悪い事はすっかり棚に上げ、父をも母をも弟をも恨んでいました。

ジョホールに着いて間もなく、伯父は私を慰めてくれる積りだったのでしょう、虎狩に連れて行きました。山蛭に悩まされた記憶はいまだに忘れられませんが、それよりもなお一層忘れられない恐しいことがあったのです。それは一緒に連れて行った苦力が逃げ遅れて、虎に喰い殺された時の光景です。実に今思い出してもゾッといたします。

伯父は、お前が虎に喰い殺された。と云って、東京の家の者達を驚かせてやったら面白かろう、と冗談交じりに云いました。そいつはうまい考えだと手をうって喜んだものです。

――家の奴等、どんな顔をしやあがるか、愕くかな、悲むかな。

そんな詰らぬ事を考えながら、うかうかと伯父の口車にのって私が死んだと知らせてやったんです。そしてひそかに皆の驚く顔を想像して、愉快で、愉快でたまらなかったのです。生きていて、自分の死んだ後の皆の態度を見ていてやる、何と面白い計画ではありませんか。

伯父の妻はイタリー人でした。