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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

船頭や待ち合せていた者も、変に思って、私たちを見ているじゃありませんか」

「そういえば弦之丞様、どうしたのだろうね」

「そろそろ日が暮れてまいりますのに、男という者は、水を向けるとこの通り、わざとじらすんでございますよ」

「じらされるのならいいけれど、もしかして、私を嫌っているのではないかしら、病気のこともご存じだからね」

「いやですよ、またカーッとして、短気なことをなすっては」

「ああ、日が暮れる。お藤や……どうかしておくれなねえ……」

「だって、困ってしまうじゃありませんか。こうなると弦之丞様も憎らしい。では、私がもう一度、源内様の所へ戻って、いるか、いないか見てまいりましょう」

「じゃ、早くにね……」と、お米が振りかえると、女中のお藤は、もう小刻みの足になって、砂利場の側を駈けだしていた。

と一緒に、石置場の蔭から、急に仲間態の男が立って、ドーンとお藤にぶつかって行った。

「あぶない……」

こっちでお米が声を筒抜かせた。――ハッと思って眼をみはるとお藤の体はグッタリして、仲間の脇の下に掻い込まれ、声も得立てずズルズルと川縁へ。

「あれッ! お藤や、お藤や!」