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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

ま、とにかく、外へ出て様子を聞いた上にいたそう」

「じゃ、あのほうは止めにする気か?」

「止めるものか! ばかなことを」

「そうだろう、初めからその手筈を相談するために、わざわざここへ落ち着いたのだ。まア火事なんざあどうでもいい、いよいよあすは江戸へ入るという、法月弦之丞から先に片づけてしまうことのほうが、今夜の火事より急だろうぜ」

「それも一理あるな? ……」

と、旅川周馬は、耳につくすり鐘の音と、弦之丞のことを、半々に思い迷って棒立ちとなっている。

お十夜がいうとおり、今夜、わざわざこの喜撰風呂へまできて、女気なしにくつろいでいる目的は、翌日の相談や、手筈を諜しあわすのが眼目であった。

翌日というのは、法月弦之丞が、江戸へ着くのをさすのである。かれが江戸の地をふまないうちに、かれの命を絶ってしまうことは、周馬にとりまた孫兵衛にとっても、最上なる手段に相違なかった。

東海道から江戸へ入るには、是非ともさしかかる八ツ山口か高輪の浦あたり――、その辺に、必殺の策を伏せておいて、殺してしまおうという二人が大体の目算。

で、そのために。

使屋に手紙を持たせて、二、三ヵ所の賭場へ、ならず者の狩り集めにやってあるところだ。