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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

「歩けるか」

友の腕を、自分の首へまわして、負うように援けて歩きながら、武蔵は、たえず自分の耳もとでする又八の呼吸が気になって、

「だいじょうぶか、しっかりしておれ」

と、何度もいった。

「だいじょうぶ!」

又八は、きかない気でいう、けれど顔は、月よりも青かった。

ふた晩も、伊吹山の谷間の湿地にかくれて、生栗だの草だのを喰べていたため、武蔵は腹をいたくしたし、又八もひどい下痢をおこしてしまった。勿論、徳川方では、勝軍の手をゆるめずに、関ヶ原崩れの石田、浮田、小西などの残党を狩りたてているに違いはないので、この月夜に里へ這いだしてゆくには、危険だという考えもないではなかったが、又八が、

(捕まってもいい)

というほどな苦しみを訴えて迫るし、居坐ったまま捕まるのも能がないと思って決意をかため、垂井の宿と思われる方角へ、彼を負って降りかけて来たところだった。

又八は、片手の槍を杖に、やっと足を運びながら、

「武やん、すまないな、すまないな」

友の肩で、幾度となく、しみじみいった。

「何をいう」

武蔵は、そういって、しばらくしてから、

「それは、俺の方でいうことだ。