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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

三

三

ふと見ると、玄関の横手に、大きな銅鑼の衝立が備えてある。

(ははあ、これを打つのだな)

武蔵が、それを鳴らすと、おおうと、遠くですぐ返辞が聞えた。

出て来たのは、叡山の僧兵にすればさしずめ旗頭にもなれそうな骨格の大坊主である。武蔵のような身装の来訪者は、毎日あつかい馴れている調子である。じろっと一瞥くれて、

「武芸者か」

「はい」

「何しに?」

「ご教授を仰ぎたいと存じて」

「上がんなさい」

右へ指をさす。

足を洗えというのらしい。筧の水が盥に引いてある。摺り切れた草鞋が十足もそこらに脱ぎちらしてあった。

真っ黒な一間廊下を、武蔵は従いて行った。芭蕉の葉が窓に見える一室に入って控えている。取次の羅漢の殺伐な動作をのぞけば、他はどう眺めてもただの寺院にちがいない。燻々と香のにおいすらするのである。

「これへ、どこで修行したか、流名と自身の姓名を誌けて」

子どもへいうように、以前の大坊主が来て一冊の帳面と硯箱とをつきつける。

見ると、

叩門者授業芳名録

宝蔵院執事

とある。開いてみると、無数の武者修行の名が訪問の月日の下に連ねてある。武蔵も前の者に倣って書いたが、流名は書きようもなかった。