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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

四

すがたに礼節を持ち、心に澄明な落ちつきを湛えている今朝の武蔵には、その詩句の意味が、素直に分った。――同時に、石舟斎の心境と、その人がらや生活も彼の心へ、ぴたりと映った。

「……おれは若い」

武蔵は、おのずから頭が下がってしまうのをどうしようもない。

石舟斎が、一切、門を閉じて拒んでいるのは、決して、武者修行の者だけではないのである。あらゆる名利を名聞、また一切の我慾と他慾を――

世の吏事に対してすら、怪しむのをやめてくれと断っているのである。石舟斎のそうして世間を避けている姿を思うと、武蔵は高い梢に冴えている月の相が聯想された。

「……届かない! まだ、自分などには届かない人間だ」

彼は、何としても、この門を叩く気になれなくなった。蹴って闖入して行くなどということは、もう考えてみるだけでも怖ろしい。いや、自分が恥かしい。

花鳥風月だけが、この門を入るべきものだと思う。彼はもう今では、天下の剣法の名人でも一国の藩主でも何でもない。大愚に返って、自然のふところに遊ぼうとしている一人の野の隠居だ。

そういう人の静かな住居を騒がすことは、余りに心ない業だ。