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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

六

邪魔にもなるまい」

「でも、後で何か、いいがかりをつけられると嫌ですから」

「もうこの金は、お髯どのの金ではない、如来様へ賽銭にさしあげて、如来様から改めていただいたお金じゃよ。お守りのかわりに持っておいで」

お通の帯のあいだへそれを差し入れて、

「……あ。風だな、今夜は」

と、空を仰ぐ。

「しばらく降りませんでしたから……」

「春も終りだから、散った花屑やら人間の惰気を、ひと雨ドッと、洗いながすもよかろう」

「そんな大雨が来たら、武蔵さんは一体どうなるでしょう」

「うム、あの人か……」

二つの顔が一しょに、千年杉のほうを振り向いた時である。風の中の喬木の上から、

「沢庵っ、沢庵っ!」

人間の声がした。

「や? 武蔵か」

眸をこらしていると、

「くそ坊主っ、似非坊主の沢庵。一言いうことがある。この下へ参れっ――」

梢を烈しく吹きなぐる風に、声は裂けて異様にひびく。そして大地へも沢庵の顔へも、さんさんと杉の葉が落ちて来た。

六

「はははは。武蔵、なかなか元気でおるな」

沢庵は、声のする大樹の下へ、草履を運んで行きながら、

「元気はよいらしいが、近づく死の恐れに、逆上しての、気ちがい元気ではあるまいな」