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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

二

二

「こういう手違いも、家を出る時から、あらかじめ、覚悟のうちにあったことよ。何も、あわてるには及ばぬわいの」

お杉隠居のそういう薄い唇と、歯ぐきの出ている大きな前歯を、一族の者は、厳粛に、立ち並んで見まもっていた。

「この婆はの、もう、家伝来の一腰刀を帯びて出る前に、ちゃんとご先祖様のお位牌へ、おわかれを告げ、二つのお誓いをして参った――それは、家名に泥を塗った不埒な嫁を成敗すること。も一つは、せがれ又八の生死をたしかめ、いきてこの世にいるものなら、首に縄をつけても連れ帰って、本位田家の家名をつがせ、他から、お通に何倍も勝るとて劣らぬほどなよい嫁をむかえ、村の者へも晴れがましゅう、きょうの名折れを雪がにゃならぬ」

「……さすがは」

と、大勢の縁者のうちで、誰か、唸くように洩らした。

お杉は、分家の聟の顔へ、じろりと、眼をやって、

「ついては、わしと、河原の権叔父とは、どっちゃも、まあ隠居身分。ふたつの大望を果すまで、一年かかるか三年かかるか、巡礼いたすつもりで、他国を巡って参ろうと思う。留守中には、分家の聟を家長と立て、飼蚕も怠るまいぞ、田や畑に草を生やすまいぞよ。