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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

二

しかし――

うっかり、それで思い上がることは出来ないぞということを、彼は今、見せられていた。わずか二十文か百文の雑器を作る翁にさえ、じっと見ていると、武蔵は、怖いような三昧境の芸味と技を感じさせられる。――それで生活を見れば食うや食わずの貧しい板屋囲いではないか。社会がどうして甘いものであろうはずはない。

「…………」

武蔵は、だまって、心のうちだけで、粘土まみれの翁に、頭を下げてそこの軒を離れた。坂を仰ぐと清水寺の崖道が見える――

二

「御牢人。――御牢人」

三年坂を、武蔵が登りかけた時である。誰か呼ぶので、

「わしか」

振り向いてみると、竹杖一本手に持って、空脛に腰きりの布子一枚、髯の中から顔を出しているような男、

「旦那は、宮本様で」

「うむ」

「武蔵とおっしゃるんで」

「む」

「ありがとう」

尻を向けると、男は茶わん坂の方へ、降りて行った。

見ていると、茶店らしい軒へ入った。その辺には、今のように駕かきが、陽なたに沢山群れていたのを、武蔵も今しがた見て通って来たのであるが、自分の姓名を訊ねさせたのは一体誰なのか。

――次には、その本人が出て来るであろうと、しばらく佇んでいたが、何者も見えない。