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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

二

武蔵は、何をしているのかと、黙って、その背後からのぞいていた。

「あれ。……人が悪いなあ」

城太郎は、武蔵の顔へ気がつくと、あわてて筆と紙とを、背中へ廻してしまった。

二

「見せい」

武蔵が、からかうと、

「いやだい!」

城太郎は、顔を振って、

「アカといえば」

と、あべこべに揶揄してかかる。武蔵は、濡れた袴を解いて、木賃の老爺に渡しながら、

「ははは、その手は喰わん」

すると、城太郎は、言下に、

「手を喰わんなら、足喰うか」

と、いった。

「足喰えば、章魚じゃ」

城太郎は響きに答えるように、

「章魚で酒のめ。――小父さん、章魚で酒飲め。持って来ようか」

「なにを」

「お酒を」

「ははは、こいつは、うまく引っかかったの。また、小僧に酒を売りつけられたぞ」

「五合」

「そんなにいらん」

「三合」

「そんなに飲めん」

「じゃあ……いくらさ、ケチだなあ、宮本さんは」

「貴様に会ってはかなわんな、実をいえば小費が乏しいからだよ、貧乏武芸者だ。そう悪く申すな」

「じゃあ、おらが桝を量って、安くまけて持って来ようね。――そのかわりに、小父さん、またおもしろい話を聞かせておくれね」

雨の中へ、元気に、城太郎は駈けて行った。