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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

――今顧みるとおかしい。

関ヶ原の役に、槍一本かついで出かけたあの時の向う見ずな壮気。

彼は、父の仕えていた主君が大坂方であったし、郷土には、英雄太閤の威勢が深く浸みこんでいたし、少年のころ、炉べりに聞かされた話にも、その英雄の現存と偉さとを深く頭に植えこまれて来たので、今でも、

(関東へつくか、大坂か)

と問われれば、血液的に、

(大坂)

と、答えるにためらわない気持だけは、心のどこかに遺っていた。

――だが、彼は、関ヶ原で習んだ。歩卒の組に交じって槍一本を、あの大軍の中でどう振り廻したって、結局、それが何ものも動かしていないし、大いなる奉公にもなっていないということをである。

(わが思う主君にご運あれ)

と念じて、死ぬならばいい。それで死ぬことも立派に意義もある。――だが、武蔵や又八のあの時の気持はそうでない。燃えていたのは、功名だった、資本いらずに、禄を拾いに出たに過ぎない。

その後、生命は珠、と沢庵から訓われた。よく考えてみると、資本いらずどころではない、人間最大の資本を提げて、わずかな禄米を――それも籤を引くような僥倖をたのんで行ったことになる。