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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

と伝七郎が、芍薬の枝をつきもどすと、お通は、

「あの、これは、道中のお慰みに、お駕なれば駕の端へ、馬なれば鞍のどこぞへでも挿して、お持ち帰り下さるようにと、大殿のおことばでございましたが」

「なに、これを土産にだと」

眼を落して、辱められでもしたように、憤っと色をなして、

「ば、ばかな。芍薬は京にも咲いているといってくれい」

――そう断られる物を、強いて、押しつけてゆくわけにもゆかないので、お通は、

「では帰りました上、そのように、……」

芍薬を持ち、腫れ物の膏薬を剥ぐように、そっとあいさつして、廊下へ出た。

よほど不快だったとみえ、送って来る者もない。お通は、それを背に感じて、廊下へ出ると、くすりと笑った。

同じ廊下の幾間かを隔てた先の一室には、もうこの土地へ来て十日余りになる武蔵が泊っていたのである。彼女が、その黒光りに艶の出ている廊下を横に見て、反対に表のほうへ出て行こうとすると、ふと、武蔵の部屋から、誰か起って、廊下へ出て来た。

七

ばたばたと追いかけて来て、

「もうお帰りですか」

お通が、振り顧ってみると、上がる時にも、案内に立った小茶ちゃんである。