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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

円座を、隅の柱の下へ移して、武蔵はそこへ倚りかかった。

短檠の明りが、庭先へ届いている。どこかで甘いにおいがするなと思って見ると、藤の花がこぼれているのである。紫もある白藤もある。ふと珍しく思ったのは、ここで初めてまだ片言の今年の蛙の声を聞いたことである。

せんかんとそこらあたりを水が駈けているらしい。泉は床下へも通っているとみえ、落着くに従って、円座の下にもさらさらと流れの音が感じられる。やがては、壁も天井も、そして一穂の短檠の灯までが、水音を立てているのではないかと疑われるほど、武蔵は冷々とした気につつまれた。

だが――その寂寞たる中にあって、彼のからだの裡には、抑えきれないほど沸きあがっているものがあった。熱湯のような争気を持つ血液である。

(柳生が何か)

と隅柱の円座から睥睨しているところの気概である。

(彼も一箇の剣人、われも一箇の剣人。道においては、互角だ)

と思い、また、

(いや今宵は、その互角から一歩を抜いて、柳生を、おれの下風にたたき落してみせる)

彼は信念していた。

「いや、お待たせ申して」

と、その時、庄田喜左衛門の声がした。ほかの三名も同席して、