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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

四

「あとの奴らは、逃げおった、野武士なんて、みんな弱いぞ」

肩を誇らせて、又八はいう。

血をこねまわしてよろこぶ嬰児にひとしい二人の笑い声だった。血の木剣と、血の刀をぶらさげたまま、元気に何か語りあいながら、やがて、彼方に見える蓬の家の一つ灯へ向って帰って行くのであった。

四

野馬が、窓へ首を入れて、家の中を見まわした。鼻を鳴らして、大きな息をしたので、そこに寝ていた二人は眼をさました。

「こいつめ」

武蔵は、馬の顔を、平手で撲った。又八は、拳で天井を突きあげるような伸びをしながら、

「アアよく寝た」

「陽が高いな」

「もう日暮れじゃないか」

「まさか」

ひと晩眠ると、もう昨日のことは頭にない、今日と明日があるだけの二人である。武蔵は、早速、裏へとびだして、もろ肌をぬぎ出した。清冽な流れで体を拭き、顔を洗い、太陽の光と、深い空の大気を、腹いっぱい吸いこむように仰向いていた。

又八は又八で、寝起きの顔を持ったまま、炉部屋へ行って、そこにいるお甲と朱実へ、

「おはよう」

わざと、陽気にいって、

「おばさん、いやに鬱いでいるじゃないか」

「そうかえ」

「どうしたんだい、おばさんの良人を打ったという辻風典馬は、打ち殺してくれたし、その乾児も、懲らしてやったのに、鬱いでいることはなかろうに」