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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
夕星が見えはじめたぞ」
信長は陣幕のうちにかくれた。――丘のうえ、丘の下。また叡山の裾をめぐる諸処の陣所に、兵糧を炊ぐ煙があがっていた。
夜に入ると、風はなお烈しくなった。常に聞く三井寺の鐘も鳴らなかった。――が、やがていんいんとして中軍の丘に貝が鳴る。諸処の陣所からは鬨の声があがった。
その晩から九月の十三日の暁にかけての大修羅であった。
中腹、山上にかけて、十数ヵ所の嶮に防寨をかまえていた山徒の守りを突破して、全山を翔けまわった織田軍の兵は、火を放って、烈風に喊声を嗄らした。
黒煙は谷をうずめ、火焔は満山に狂い、ふもとから仰ぐと、大きな火の柱が、叡山の各所からあがっていた。
湖まで赤かった。
その巨大な火の柱の位置から察しると、根本中堂も焼けている、山王七社も焼けている。また、山上の大講堂から、鐘楼、法蔵、諸院の坊舎、宝塔、高塔、峰々谷々の末院坊舎にいたるまで、残された伽藍というものは一つもなかった。
(――心に桓武天皇の勅を奉じ、胸に開山伝教大師のゆるしをうけて我は焼くのだ!)
そら恐ろしいばかりな炎を仰ぐたびに、諸将は、信長のいったことばを、胸によび起して、自分を励ました。