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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
以後、いついかなる戦場でも、覚兵衛の影が、虎之助の影から離れていたことはない。
その覚兵衛の眼から見ても、前にある虎之助の働きぶりには、何の不安もなかった。覚兵衛はもちろん虎之助よりずっと年上だし、戦争の場数も多く踏み、浪人してもよい主人をと心がけて容易に仕えなかったほどであるが、彼は実にいまの主人には心から惚れこんでいた。
(――このお若い主人の豪胆は天質のものだ。単に大豪の質があるのみか慈悲もおふかい)
ひとたび仕えれば自分の生命も自分の生命ではない。覚兵衛が心のちかいには、この大豪にして慈悲ある青年の将来を天寿にいたるまで生かしてみたい念願がある。そのためにはいつでも主人の生命に代って自分の生命を打ち捨てる覚悟でいた。そこにこの主従はむすばれていた。
「あッ。おのれッ」
覚兵衛は、本能的に、ひとりの敵へとびかかった。おそろしく敏捷精悍な敵が、虎之助のうしろへまわって、長巻を振りかぶり、あわや斬り下ろそうとしていたのを見つけたからであった。
地ひびきがした。
血漿のけむる中に、主従は顔見あわせ、にこと笑った。
覚兵衛は注意した。
「そこらはもう砦の本丸に近いようです。