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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

「こら、こら、その方などでは、はなしが分らん。分る者をひっぱって来い。この辺の顔役、花隈の熊と、生田の万という親分が、この街道すじの客をあいてに、毎年の例で、野天で餅つきの盆ござ興行をいたすのだ。それには、ここが恰好な場所ゆえ、三日のあいだ、立退けとはいわん、貸せと申すのだ。わかる者をつれて来い」

この浪人たちの日常語は、無頼の徒とすこしも変るところはないが、あいてを脅かそうという意識をもつときだけ、武士言葉をつかう習性になっているらしい。同時に、ヘンに肩を張って、刀の鯉口などをひねくるのであった。

「なんだい、為」

うしろへ人の気配がしたので、浪人たちはすぐ身をねじった。石権と介三郎が、だまって聞いていたのである。

介三郎へは、さすがに少し小気味のわるいものを感じているらしく、浪人者はかれを無視して、石権へ懸合いにかかった。

「親方か、その方は」

「そうです」

「いま、聞いての通り、土地の顔役が、餅つき興行に、ここを借りたいと仰っしゃるのだ。いくらかの酒代はもらってやるから、三日のあいだ、あの小屋と、この辺に、ずっと縄を張って、借りうけるぞ。苦情はあるまいな」