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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

十一

十一

そう遠くではない。時間にしても短かった。――赤城下あたりの坂道。

紋太夫の妻が、そう思っていた頃、駕はふいに、坂道の途中でとまった。

「あっ。此家は」

駕のうちから出されると同時にかの女は口走った。藤田将監の家のまえではないか。

将監というのは、藤井家の親戚で、紋太夫には伯父にあたるひとである。

「ご子息たちも降りられい。ご老母も……」

ここまでは、海野三右衛門や秋山村右衛門も、至極、鄭重であったが、紋太夫の家族四人をそうして、門の内へ突きやると、

「――お渡しいたしたぞ」

と、もう囚人に扱った。

門内には、十名ばかりの役人が、奥の出入口を監視していたが、

「おう、たしかに、受取った」

と、その仲間で答える。

断るまでもなく、みな水戸家の臣だ。家宅捜索でも行ったらしく書院などに、反古やら調度の散らかっているのが外からも窺われた。

紋太夫の家族たちが、そこの奥へ引っ立てられて行ったかと思うと、やがて、わっと泣く少年たちの声と、すすり泣く女の声とが一瞬、洩れて来た。

「裏手の戸、通用口、勝手元、すべて外との往来を禁じるのだぞ。戸などは、釘づけにしてよろしい。