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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁
六
生きてゆく国土のさきに、いよいよ多事多端を感じるほど、身を、命を健やかに備えておこうという気もちは、たれよりも老公自身が強かったにちがいない。
けれど所が西山荘であり、余りに老公と身近すぎるところから、初めのうちは、やや固くなっていた今夜の集まりも、折から、美人来るという天来の取次をきいていちどに和み、荒涼たる炉のまわりは、にわかに春の晩になった。
しかし意地のわるい老公は、かれらが、はしゃぎ立つのをよそに、
「そうか。……では、白石の後家も、むすめの蕗とやらも、控えに待たせておけ。茶など与えて」
と、悦之進へいった。ここへ通せとは、いってくれなかった。
六
すこし雰囲気が沈みかける。座の空気は微妙にうごく。老公は独りおかしく思う。
「さあ、飲まんか」
「飲んでおります」
と、誰かいう返辞までが、平凡になる。
「与平与平、酒部屋からもっと運べ。なに、まだ初めのが半分もあるというか。はて、一向にすすまんなあ。与平、これへ来て、そちも交じれ」
「はい。仰せを、待ちかねておりました」
剣持与平が、酒番をやめて、座に加わる。老公はなお、台所の次をふり向いて、
「もう一名おるのは誰か」