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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

棒

一

仙波沼の水が先のほうに少し見えた。水鳥だろう、胡粉を点々とおいたように白い。

「……ここじゃな」

なつかしそうに、老公は杖をとめた。樹木にかこまれた閑寂な門。卜幽居とある朽ちた木額が眼につく。

「又左はもういない」

ここに立ってから、彼はあらためてそう思い直した。卜幽人見又左――そのひとの浪宅はむかしに変らずあるが、そのひとはすでに世に亡かった。

いまいるのは、又左の一子又四郎である。けれど故人のいた頃からの口ぐせで、老公はいまも、又左の浪宅とここを呼んでいた。

棒

一

柴門をあけて、

「又四郎、おるか」

その老公の声を聞くまでもなく、あなたの母屋から、三名は駈けだして来て出迎えた。

三名とは。

さきにここへ来ていた従者の林助、悦之進のふたりに、又四郎を加えたものである。

「お休み所は、書堂にしておきました」

又四郎はどしどし先へ行く。

老公は、あたりの木々や、庭のたたずまいを見まわしながら、

「結構」

と、うなずいて、家の中央を占めている書斎へ通った。

ふつうの武家の書院とちがい、そこにも次の室にも、書物がたくさんあった。春蘭の鉢、陶器、文房具など、明国物のにおいが濃い。