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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

二

娘は、若い鶯のように、辻を斜めに、老公のほうへ小走りに寄って来ようとしたが、なぜか、うしろにいた渡辺悦之進が、あわてて顔を横に振ったので、はたと足を立ちすくめてしまった。

二

何かものいいたげな瞳を、悦之進のすがたへ注いだが、悦之進のあわてた顔いろに、彼女も顔をあからめて、道を曲ってしまった。

老公は、見送ってから、

「悦之進。いまの娘は、たれの娘か。――なぜそちは、素直にあいさつをしてやらなかったのじゃ」

と、かえって、彼の無情をとがめた。

悦之進は、まっ赤になった。恐縮をとおりこした容である。

「申しわけございません」

「それは娘にいうてやれ。わしに詫びることはない」

「路傍ではあり、お供の折、遠慮いたしておりましたが……父と父とが、極く親しくしていたので、それで」

「いずれ、家中の者の娘であろうが、その父親というのは」

「もう世におりませんが、白石助左衛門どののご息女です」

「なに、助左衛門の」

これには老公も驚いたらしい。余りにも、自分のうちに感じていた事と中りすぎていたからである。

似ていたはず。――いま去った娘のどこかに、自分の若かりし頃の恋人にそっくりな面影が見えたのは、偶然ではない。