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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁
十四
急に、起って、
「小柄は急所を突き刺しました。助からないかもわかりません」
と、傷負の顔をのぞき直した。
「手当しても、助からねば、天命といえよう。ただ手当だけは、加えてつかわしたいが」
佐々介三郎が、一頭の駒を曳いて、この林へはいって来たのは、ちょうどその時であった。
介三郎は、わらじ脚絆などすっかり足ごしらえまですまして、
「ご隠居さま、お身まわりのものすべて、持参いたしました。ここで遊ばしませ」
と、べつに鞍へ着けて来た老公の旅の物を、何かと、草の上に展げた。
「よし、よし」
老公も草のなかに坐った。
そして、脚絆をつけ、わらじを穿ち、懐紙その他、道中用のものを、悉く身につけた。
「それでおよろしゅうございましょうか……まだ何ぞ」
「これでいい」
と、愛馬の鼻づらを撫でて、
「ご苦労をたのむぞ。このたびはちと遠方――」
と、つぶやいて、また、
「介三郎」
「はっ」
「もういちど、留守の者へ、いい残してまいれ。これに仆れておる台所庖丁人、不愍なればよく手当をしてつかわせと」
「承知しました。――では、そのうちにお支度を」
「よし、よし」
老公は、鞍のそばへ寄った。