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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

十二

といっている。

宿場問屋に働いている自分ごときものには、這般の事情はもとより分らないが、何となく、安からぬ思いがして、

(何か、自分のようなものにでも、出来ることがあるなら、お役の一端にでも立ちたい)

という気持がおこり、急に江戸へ出て来て、佐々介三郎をたずね、その通りな心を訴えてみたところ、

(べつだん事件も何もありはしない。また、志はありがたいが、そちなどの力をかりることもない)

とあっさり断られたので、この前、泊ったことのある浅草見附の木賃に落ちつき、二、三日は見物でもして水戸へ帰ろうかと思っていると、今朝早く、介三郎がふいにたずねて来て、

(すこし手が足りないから、貴様も来い)

とのことに、どこへ何しに行くのやら分らないが尾いて行くと、途中から渡辺悦之進と江橋林助が加わり、三名とも、ここへ来ると、裏表の門から邸の中へはいってしまった。――そしてそのまま、いまもって、何の事もないので――と、勘太も不審顔するだけであった。

与平は、苦笑して、

「そうか。ではそちは、ここに立って、見張をしておれといいつかったのだな」

「へい。たれか、不審な者でなくとも、この邸へ来る客とか、また、柳沢家の家来らしい者でも来たら、すぐ門外から礫を投げて中にいるわれわれに合図をしろ――と、そう申しつけられておりましたので」