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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

燕作でなくても、ひとたびここに立って、一朝の幻滅をはかなみ、本能寺変いらいの、天下の狂乱をながめる者は、だれか、惟任日向守の大逆をにくまずにいられようか。

けれど、その光秀じしん、悪因悪果、土冠の竹槍にあえない最期をとげてしまった。で、いまではこの安土城のあとへ、信長の嫡孫、三法師丸が清洲からうつされてきて、焼けのこりの本丸を修理し、故右大臣家の跡目をうけついでいる。

だが、三法師君は、まだきわめて幼少であったため、もっぱら信長の遺業を左右し、後見人となっている者はすなわち、ここ、にわかに大鵬のかたちをあらわしてきた左少将羽柴秀吉。――つまり、早足の燕作が、はるばる尋ねてきたその人である。

「おっと、見物は帰りみちのこと、なにしろ役目を果さないうちは気が気じゃない……」

と燕作は、ふたたび笠のふちをおさえながら、一散に石段から石段をかけのぼっていくと、

「こらッ」

といきなり合羽の襟をつかまれた。

「へ、へい」

とびっくりしてふりかえると、具足をつけた侍――いかにも強そうな侍だ。

槍の石突きをトンとついて、

「どこへいく? きさまのような町人がくるところじゃない。