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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

天の筏

一

武士たちは、ふたたび、見ぎたなく逃げ出した。龍太郎と伊那丸は、血刀をふって、追いちらしたうえ、昼間のうちに、見ておいた本丸をめがけて、かけこんでいった。

家康にちかづいて、武田一門の思いを知らそうと思ったことは破れたが、せめて一太刀でも、かれにあびせかけなければ――浜松城の奥ふかくまではいってきたかいがない。めざすは本丸!

あいてはひとり!

と、ほかの雑兵には目もくれないで、まっしぐらに、武者走り(城壁の細道)をかけぬけた。

天の筏

一

矢倉へむかった消火隊と、武器をとって討手にむかった者が、あらかたである。――で、家康のまわりには、わずか七、八人の近侍がいるにすぎなかった。

「火はどうじゃ、手はまわったか」

寝所をでた家康は、そう問いながら、本丸の四阿へ足をむけていた。すると、闇のなかから、ばたばたとそこへかけよってきた黒い人影がある。

「や!」

と侍たちが、立ちふさがって、きッと見ると、物の具で身をかためたひとりの武士が、大地へ両手をついた。

「お上、武田の主従が、火薬をしかけたうえに狼藉におよびました。ご身辺にまんいちがあっては、一大事です。はやくお奥へお引きかえしをねがいまする」