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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

怪船と巽小文治

一

怪船と巽小文治

一

伊那丸と龍太郎が外濠をわたって、脱出したのを、やがて知った浜松城の武士たちは、にわかに、追手を組織して、入野の関へはしった。

ところが、すでに二刻もまえに、蓑をきた両名のものが、この関へかかったが、足軽鑑札を持っているので、夜中ではあったが、通したということなので、討手のものは、地だんだをふんだ。そして、長駆して、さらに次の浜名湖の渡し場へさしていそいだ。

いっぽう、伊那丸、龍太郎のふたりは、しゅびよく、浜名湖のきしべまで落ちのびてきたが、一難さってまた一難、ここまできながら、一艘の船も見あたらないのでむなしくあっちこっちと、さまよっていた。

月はないが、空いちめんに磨ぎだされ、かがやかしい星の光と、ゆるやかに波を縒る水明りに、湖は、夜明けのようにほの明るかった。すると、ギイ、ギイ……とどこからか、この静寂をやぶる櫓の音がしてきた。

「お、ありゃなんの船であろう?」

と伊那丸が指したほうを見ると、いましも、弁天島の岩かげをはなれた一艘の小船に、五、六人の武士が乗りこんで、こなたの岸へ舵をむけてくる。

「いずれ徳川家の武士にちがいない。