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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

「――まことかくもうす卜斎こそは、北国一の雄、柴田権六勝家が間者、本名上部八風斎という者、人穴の築城をさぐろうがため、ここに鏃師となって、家の床下から八ぽうへかくし道をつくり、ここ二星霜のあいだ、苦心していたのでござる」

「おう……」うめくがようにふたりは顔を見あわせて、

「音にきこえた鬼柴田のふところ刀、上部八風斎とはそこもとでござったか。してその御人が、なんのご用ばしあって、われわれをお止めなされた」

「されば、それがしの主君勝家より密命があって、ご不運なる武田家の御曹司へ、ひとつの贈り物をいたそうがため」

「はて、柴田家より伊那丸君へ、そもなんの贈り物を?」

「すなわちこの品――」

と、八風斎がしめしたのは、かれが学力の蘊蓄をかたむけて、くまなくさぐりうつした人穴の攻城図、獣皮につつんで大せつに密封してあるものだった。

「――かねてから主君勝家は、若年におわし、しかも、孤立無援に立ちたもう伊那丸さまへ、よそながらご同情いたしておりました。折から、このたびのご苦戦、ままになるなら、北国勇猛の軍馬をご加勢に送りたいは山々なれど、四隣の国のきこえもいかが、せめては武家の相身たがい、弓取り同士のよしみの印までにもと、この攻城図を、ご本陣へさしあげたいというおいいつけ」