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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

紺地無紋の陣羽織をつけ、ひだりの籠手に采配をもち、銀作りの太刀をうしろへ長くそらしていた。

兵は味方より計るというが、あまり意外なことなので龍太郎は、呂宋兵衛の縄尻をとりながら、民部に向かってたずねてみた。

「こよいは法師野に平陣をしかれて、あれにおいであることとばかり思っておりましたに、いつのまに、この塔のうちへお越しなされてでござります」

「おん大将の陣は、ありと見ゆるところになく、なしと見ゆるところにあるのが常、べつにふしぎはござりませぬ」

と、民部はことばすくなく答えたのみ。

「いつもながら軍師の妙策、敬服のほかはござりませぬ。ところでこやつはいかがいたしましょうか」

「わが君の御意は!」

「そうじゃの……」

伊那丸はじッと考えて、

「厳重にひっくくって、ひとまず、この三重の塔のいただきへからげつけておくのはどうじゃ」

「ともすると、幻術をもって人をまどわす妖賊、なにさま、陣ぞろいのまもありますゆえ、それが上策かも知れませぬ」

「ウム、軍馬をそろえて、小太郎山の砦へひきあげたうえは、御旗楯無の宝物のありかも、とくと糺してみねばならぬゆえ、そのあとで咲耶子に討たせてやるもおそくはあるまい」