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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

ピイッ! ピピピピッ。

一羽の翡翠。

いつもの朝のとおり、るり色の翼をひるがえして、扇縄の水の手へとんできた。そして、翡翠がもつあの長いくちばしで、水に棲むハヤというちいさな魚をねらいに降りた。

――と思うと翡翠は、バッと水面をつばさでうっただけで、風にさらわれたようにすッとんでしまった。

名人の矢に狂いはあるとも、翡翠が魚をくわえそこなうなんていうことはけっしてないのに。

と見ると、その朝にかぎって、扇形の貯水池には小さなハヤや大きな山女が、白い腹を浮かせて死んでいるのだ。あの強そうな赤い山蟹まで、へろへろして水ぎわに弱っていた。

「こりゃあいけねえ」

それを見て、水をすかしているふたりの士卒がいった。大久保勢の兵糧方、飯や汁を煮炊する身分の軽い兵である。

「ゆうべ水門を開けておかなかったから、まだこの水の手には毒がよどんでいるんだ」

「それじゃ、朝の兵糧を炊くのにさっそくこまるぜ」

「――掃除をして新しい水を入れかえなけりゃ……」

「やっかいだな、こんなわるさをしやがって」

「城をとるやつは、兵糧方のこまることなんか眼中にはない。攻め取りさえすればいいんだから」