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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
これも皮肉な処置である。
足利、新田、宇都宮など、境を接する国々の守護には、なるべく、つねに反目を持たせようと努めている幕府の底意地わるい政策にほかならないものだった。――足利党の家中みなが、無念としたのも当然である。みすみす、主と仰ぐ若殿が、日ごろ下風に見ている新田党の手にかかって、その自由も蟄居の門も、彼らの警固に、ゆだねられた上、
「たとえ、高氏殿のおん母たりとも、鎌倉どののみゆるしなくば、お会わせ申すことはならぬ」
とまで、へだてられて来たのだった。
――爾来、月日はもうここに、二年余りをすぎている。
年号すらも変って。
正中元年
その今年も早や、四月に近い遅桜が、裏の峰にもここの濠にも散りかけていた。
清子は、大日如来の御前に、長いこと額ずき、また、地蔵菩薩の宝前に、香や花をささげ、地蔵経一巻を声ひくく誦んで、いつものように、杉木立の小道を、館の方へもどって来た。
すると、木蔭を走って、
「母上。吉報です」
と、雀躍りして来た若者があった。高氏の実弟、ことし十七の直義なのだ。
「よい知らせとな。では鎌倉どののお下状でも?」
清子はすぐ、わが子の御ゆるしかと、胸おどらせた。