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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

楠木たずね

――そのまん中に、手も足もうごかしえない大内山の森、内裏の諸門が、しいんとして在った。

が、十九日も明けてからの、宮中の驚愕と、徐々に増しつつあった不安は、どんなであったろうか。――外部からさえ、思いやらるるものがある。

その重くるしい宮門には、やがて、ひきもきらぬ公卿の車駕が、参内していた。宮中奥ふかき所の昼夜、どんな協議が行われたのか。――すでに事変後三日めの朝であった。そこを崩れ出るごとく退がッて来た公卿車の一つに、日野蔵人俊基の姿も見られた。

楠木たずね

彼の館は、七条丹波口だった。ここらはもう京も端れ。

遅々たる牛車で、内裏から退がって来るには、ぬかるみ、石コロ道、秋草しげき田舎道、さんざんかかる。

「……お。いつか、わが家」

車のうちで、俊基は居眠っていたらしい。おそらく、一昨夜来の宮廷では、彼のみならず、帝をめぐって、不眠の凝議だったであろう。

しかし、彼はいつもと変っていない。ふてぶてしいばかりな寝ざめ顔を、一つ撫でて、

「菊王」

と、車の簾から外を覗く。

走り童の幼時から、俊基に可愛がられて来て、このおあるじに仕えること、形影もただならぬ侍童の菊王は、