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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

私本太平記

乱鳥図

乱鳥図

都は紅葉しかけている。

高尾も、鞍馬も。

その日、二条加茂川べりの水鳥亭は、月例の“文談会”の日であった。

流れにのぞむ広間の水欄には、ちらほら、参会者の顔も見えはじめ、思い思いな水鳥の群れに似た幾組かを、ここかしこに作りあっていた。

「いいなあ、秋の水音は」

「肌ごこち、なんともいえぬ。河原は昼の虫の音だし……」

また、べつな組では。

「――今日は、何人ぐらい集まろうかの」

「いや、ほとんど洩れはあるまい」

「触れ状では、久しく見えなんだ俊基朝臣も、今日はお顔を出されるとか」

「それよ。何ぞの報告もあるにちがいない。長い忍び行脚から、両三日前、密かに、帰邸しておられたそうだから」

かかるうちに、追々、参加者はふえていた。

――顔ぶれを見ると。

尹ノ師賢、四条隆資、洞院ノ実世、伊達ノ三位遊雅、平ノ成輔、日野資朝。

僧では、聖護院ノ法印玄基。ほか数名。

また武士側は、足助次郎重成、多治見国長、土岐左近頼兼などの十数人。

さらに、儒者とも医師ともみえぬ者も、交じっている。

要するに、この文談会の趣旨というのは。

僧俗貴賤の階級も問わず、ただ文雅に心をよせ、好学の志を持つものを以て集まる――というのであったから、この玉石混淆も、ふしぎではない。