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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
道誉は坐った。装束の両袖を大きく開いて、問注所衆の列座へ、まずうやうやしく一礼する。
「……?」
高氏は喉の辺で、おおと、つい言いそうだった。が、道誉は対い合った高氏へ、ちょっと一眄をくれたものの、にんまりともする風ではない。
かつて、近江伊吹ノ館では、いやらしいほど愛想よく見えた彼の頬の黒子も、今日は何か、敵意をふくんで挑む物にしか見えないのだ。冷淡さ、まるで別人の気がされる。
だが、烏帽子こそ乗せていても、その青々とした若入道の頭に変りはない。たとえ一夜でも、歓宴を共にした人間に、よくもこんな面構えができるものだと怪しまれるほど、恬然と、嘯き澄ました行儀であった。
しかも、法廷はその道誉の扱い方にも、高氏への審問にも、よほど今度は慎重らしい。
執事の座では、貞顕を中心に、寄人たちの間で、書類筥を廻したり、何やら、ひそひそ声をかわしたりしていたが、やがてのこと、
「足利に糺すが」
おごそかに、金沢貞顕が、審問の口をきり、
「――条々の御不審、一々即答せられよ。ただし、こは訴訟に非ず、上意同様のお訊ねならば、つつしんで答えませい」
と、言い渡した。
高氏は両手をつく。