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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
一応の伺立ても形式にすぎないのである。
そこで、とどのつまり、高時の上意も充分いれたような最後の一案をねッて終った。そして、
「しからば、これを以て、御裁可を仰ぐことといたせば、御一同は、各※(二の字点、1-2-22)のお支度部屋へ退がって、暫時、御休息をとられたがよろしからむ」
と、人々に一応の退座をうながしてから、内管領ノ長崎高資と赤橋守時のふたりだけが、そこから執権御座所の方へ先に立って行った。
廊、また廊を曲がって“平沙ノ庭”とよぶ坪の中橋を渡ると、執権御所の錠口だった。
――その中橋ノ廊を、二人の影が越えてゆくとき、ちょうど、暗い暁天のどこかを、時鳥が啼いてすぎた。けれど二人の耳には怖らくよそであったろう。……そしてすぐ、二人が聞いたのは、燭光まだ夜半のまま照り映えている八連の御簾の内から、とつぜん、きゃッきゃッ……と洩れてきた高時の笑い声だったことは、確かである。
高時は、女たちを侍らせて、酒宴していた。
いやその相手なき酒宴には、とうに飽いて、杯盤も遠くにやり、茵の横には、脇息がわりに、白絹の夜具を厚く折りかさねていた。それへ凭れて、片脚を投げ出し、今、ひと刻のまどろみから、眼ざめたらしい容子でもある。