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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
親ごころ、推し量るに。
――さすが違うものかな。吉田定房の家にあった皇太子の頃とはずんと違って、ああ、ゆゆしい大君ぶりになられしよ。
と、頼もしげに、御覧ぜられているかに思われた。
こう御対顔の間は、奏楽も止み、関白ノ内経、諸大臣らは、床のすえにひれ伏し、西と東の中門廊にも、多勢の上達部(上級の公卿)が、御簾揚げわたした辺りの一点を、粛と、見やり奉っていた。
すると、その中にいた吉田ノ大納言定房が、とつぜん直衣の袖ぐちを眉にあてて泣きすすりをもらした。みかどがまだ尊治親王とよばるる御身分にすぎなかった幼少から、わが家にてお養だて申しあげて来たいわゆる乳父の彼であった。「……さてこそ、無理からね。そのかみの古ごとなど、さまざま思い出しての、うれし泣きであろうに」と人々は、今日の事に会った定房の感慨のほども察していた。
ここで“御拝ノ礼”がすむ。
みかどは、一たん階ノ間から公卿の座へ戻られ、法皇もまた内へ入らせ給うて、あらためてのお席となる。
そして再び、楽部の伶人の奏楽につれ、次の御宴では、法皇もお茵ばかりのおくつろきだった。――また、内裏から御供してきた女房たちも、一の車、二の車、三の車と、それぞれの簾から匂いこぼれて、末の廂の間に妍を競うた。